今日は日本選手権決勝の裏でひっそりとGCCをしてきたけど、優先してこれを書きたいと思います。


まずkukekeさん、日本選手権優勝本当におめでとうございます。
リアルでもDN上でも交流の無い方ですが、ddsさんの記事より来歴を拝見しました。
マジックを始めたのがアラーラ発売直後で僕が復帰したのとほぼ同時期。並み居る古豪、強豪、そうそうたるプロプレイヤーたちを退けてキャリア僅か3年にも満たずに日本の頂点に立ったことは、偉業としか言い表せません。本当に凄いことだと思います。
ビート大好きでまずナヤのエントリーセットに手をつけたことも、個人的に共感を覚えます。
そして「ドブン」というのをただの成り行きの結果として捉えるのではなく、ドブンの本質を考え、ドブンを起こし、起きたドブンをどう生かすかということを真摯に研究し練習した、その姿勢は僕たち草の根のマジック愛好家でさえ見習うべき点がおおいにあるでしょう。
マジックというのは不確定要素や運否天賦に満ちたゲームですが、己自身の思考・技術の及ぶ範囲の事象は全て最善にした上で、初めて運否天賦に賭けることが許されるものだと、僕は思います。
「引きの強さが武器である」と自他共に認められているプレイヤーは、同時に「引きの強さ以外」の全てのことを高いレベルでこなしているはずです。
完璧なフォームで全力で走らなければ、追い風が吹くことの利を生かせはしませんからね。
上昇気流に乗るのが上手い人は、常に気流に乗るための完璧な姿勢を取っているのです。
こんな名もない単なる一愛好家が言うのもおこがましいことですが、殴るの大好きドブン大好きな僕のようなタイプのプレイヤーの、最高のサクセスストーリーを見せてもらいました。
「運とはこうやって捕まえるものだ」、そんな素晴らしいお手本を見せて頂いた気がします。

おめでとうございます、世界選手権での活躍も期待しています!



続いて二位の藤本さん、惜しかったです。
決勝生放送のときは外出していたので今の時点でどういう試合内容だったかはわかりませんが、とても興味があります。
藤本さんといえばローリー印の緑白アグロで駆け上がってきたプレイヤーですが、正直ここまでやってくれるとは思いませんでした。
「緑白はヴァラクートに勝てる」という持論で緑白アグロを調整しつづけて来ましたが、同じ考えを何人もの実力あるプレイヤーが持っていてくれていて、それをこういう形で実現してもらったことで、凄く勇気を貰いました。
先ほどkukekeさんの姿勢に共感を覚えると言った舌の根も乾かぬうちにいうのも申し訳ないですが、デッキ内容では藤本さんにとても期待していました。
前日予選で抜けたレシピに緑白があり、初日スタン全勝のレシピに緑白があっても、「これって本当にヴァラクートに勝てるの?」っていう声が公式ニコラジなどで多く聞かれました。
しかし今日現在の藤本さんの結果を見て、そういう意見を言う人は少なくなっているでしょう。
まだそう思うのなら、どうぞ納得のいくまで分析し研究して御覧なさい。
自分の立てた理論が正しいことを本来は自分自身で実証するべきなんでしょうが、こんな大舞台で同じことを実証してくれた人がいることは嬉しい限りです。
僕はプレイヤーとしては馬鹿で間抜けで下らないミスばかりする奴ですが、デッキ製作者としての自分にはそれなりの誇りがあります。
他人の成功に便乗するのは何だか小物染みていて滑稽だと自分でも思いますが、僕は藤本さんが準優勝でとっても嬉しいです。
俺たちは勝ったんだ!緑白を研究していたものの端くれとして、そう思わせてください。



さらに個人的な話になりますが、イカ彦兄さんこと井川さん、あと一歩で日本代表になれなくて本当に残念です!
兼ねてからhappymtgのレガシーMAD研究室を読ませて頂いていて、よくデッキをコピーして回していました。個性的で奇抜でアイデアの溢れるデッキばかりで、読むのも面白くて使うとさらに面白いものばかりです。僕はガチガチなデッキの組み方しか出来ないので、ああいう新しいアイデアを綺麗に形にするデッキ構築っていうのは羨ましく思います。
つい半月前のPWCのチムスタで初めてお会いして「ファンなんです、えへへ」なんて挨拶をさせてもらったばかりなので、昨日のトップ8の中に名前があって「おおースゲェ!!」って興奮してました。
デッキも超前のめりな白単鋼のメインにこっそり2枚入った定業と、サイドに統一された意思!安定を得るために最低限、最適枚数のパーツを入れたタッチ青、さすがのセンスだなと思いました。
三位決定戦は魔王三原さんに破れてしまいましたが、また次の機会の活躍を期待しています!!



最後は誰というわけでもなく、ヴァラクートについて。
この大本命のアーキタイプが予想通り最大勢力を築いてTOP8に三人も入ったのは、僕はいいことだと思います(三位決定戦がヴァラクートの三原さんが井川さんを下したことは、う~ん複雑。。。)。
先述の通り僕はアラーラブロックから本格的にマジックを始めた人間です。
そのアラーラブロックは個々のカードパワーが非常に高く、いわゆるグッドスタッフといわれるデッキが組みやすい環境にありました。
その後のゼンディカーブロック、ミラディンの傷跡ブロックと環境が移行するにつれ、(石鍛冶の神秘家、精神を刻む者、ジェイス、原始のタイタンなど一部を除いて)個々のカードパワーはそれまでより低く設定されるようになっていきました。
アラーラブロック中心の環境ではジャンド、バント、ナヤなどグッドスタッフ的なデッキが多く存在しましたが、そのアラーラが落ちた後は個々のカードパワーを集めただけではデッキとして成立するに至らず、明確なコンセプトを持ってデッキを構築することが求められる環境になりました。
僕はアラーラが落ちたことでそれまでのような強いカードを集めるデッキの組み方ができず、とても苦痛でした。というか、今でもちょっと苦痛です。
それと同時期に環境最強のデッキとして君臨したのが、強烈なコンセプトを持ったデッキであるヴァラクートです。
一時はCaw-Bladeに最強の座を明け渡しましたが、ヴァラクート使いはプロツアーから身近な草の根まであらゆる環境に常に一定数存在し、ちょっといいデッキが組めたと思ってもヴァラクートに当たると手も足も出ずボコボコにされる、そんなことが毎週のように続きました。
正直気が滅入りましたし、ヴァラクートを見ることさえ嫌になりました。
そんな中で僕はこんな思いを抱くようになりました。
「ヴァラクートに勝ち目の無いデッキなんて、デッキじゃない」
どんなに頑張ってマナ加速してクリーチャーを展開してライフを攻めても、一定ターンが経過すると全く別の次元から膨大なダメージが降り注ぎ瞬く間に敗北させられてしまう。そんな理不尽なデッキというのが、僕の中のヴァラクートのイメージです。
赤単のような純粋に速いデッキならば自然に間に合ってしまうこともあるでしょうが、僕がたまたま好きだった緑のビートダウンは出足がどうしても遅れるので、漫然とクリーチャーを並べるだけではまず間に合いません。
一体どうしたらいいものか。
そこで僕は今までのデッキの組み方を改め、デッキ構築を一から勉強することにしました。
個人名を挙げればボトムデッカーさんのDNはおおいに参考にさせてもらいましたし、直接アドバイスを頂いたこともありました。
氏には本当に感謝しています。
最初は形だけの見よう見真似でしたが、それだけではどうしても結果に結びつきませんでした。
自分のデッキに応用するには、氏から学んだことを自分の力で噛み砕き自分の組みたいデッキに一つ一つ当てはめる、大仰にいえば再構築する必要がありました。
その過程で、ヴァラクートに関して一つ気がついたことがありました。
ヴァラクートはメインに稲妻等の数枚の火力、サイドに紅蓮地獄等の全体火力やアーティファクト、エンチャント破壊を取っていますが、基本的に自分のコンボを達成させることを優先するデッキなのでこれらは必要最小限です。
コンボが達成するまでは最低限にしか盤面に干渉してこないこと、その間にこちらが勝つこと。
言うなればヴァラクートに勝つことは「ターンとの戦いに勝つこと」だということです。
コンボを達成するまでのターンは決まっていて、それまでに盤面に干渉してくる回数の予想が立てやすい。
僕は、ヴァラクートに勝つには「決められたターンの間に20点のダメージを与える最適なデッキを組むことだ」という結論に、ようやく達することができました。
キルターン、というのはビートダウンの最も基本的な概念の一つですが、その重要性を強烈に突きつけてくるのがヴァラクートというデッキなんだと深く感じました。
もちろん相手が居ない一人回しでなら4キルできるデッキなどいか様にも組めますが、相手から干渉を受ける前提で考えなければ実戦で使えるデッキにはなりません。
まず相手のデッキの動きを想定しないといけませんが、ヴァラクートは比較的決まったパターンの動きをするので、仮想敵とするには分かりやすいデッキでした。
ヴァラクート側の動きを想定した上で、例えば「1ターン目にバッパラが焼かれるケースと焼かれないケース」「2ターン目に3マナ域アタッカーが焼かれるケースと焼かれないケース」、サイド後は「紅蓮地獄を撃たれるケースを撃たれないケース」「転倒の磁石を置かれるケース」など様々なパターンを想定した上で、こちらの動きを組み立てていきました。
そうして徐々に、「一定の確率でヴァラクートに間に合う動き」というのが出来上がっていきました。
最近僕が「先手ならヴァラクートに勝てる!」と言っていたのは、そうした動きの想定によるものです。
そうして大体の「動き」が決まったところで、今度はその動きをするために必要なパーツの枚数を簡単な確率論で弾き出し、また5枚以上同じ役割ができるパーツが揃わないときは、代替パーツを用意して、元の「動き」に修正を加えます。
こんな話は、前にも一度しましたよね。
こうして「ヴァラクートに勝てるパーツの集合体」が出来上がったところで、他のデッキに対する勝ち方も同じように確認し、フリースロットを埋めたり修正を加えてデッキを完成させていきます。
そうして出来上がったのが、「先手ならヴァラクートに勝てる」今の緑白アグロです(今日使った最新のレシピは後日掲載します)。
自分の大好きな色の大好きなアーキタイプで最初は絶望的だった目標がほとんど達成できちゃったんだから、僕はとてもラッキーだと思います。
個人的な事例の話が長くなりましたが、要はヴァラクートは「コンセプトを持って構築すること」「動きを理解して構築すること」の重要性を教えてくれる「先生」のようなデッキだと、僕は思っています。
勿論ヴァラクートにも色々なタイプがあり、マナ加速にもフィニッシャーにもサイドボードにも様々な選択肢がありますが、それを勘案した上でも実に完成されたアーキタイプだと思っています。
ヴァラクートがいなければ僕はおそらくあんな絶望を味わうこともなかったでしょうし、そこから打倒を目指してデッキ構築の勉強をするモチベーションも起こらなかったでしょう。
あれも強いから入れてこれも強いから入れて、という初心者的な構築から一歩前進するきっかけを与えてくれた、それが僕にとってのヴァラクートです。
そんな僕みたいちっぽけな愛好家だけでなく、何千何万という人が研究し研究しつくされ、数多くの対抗案が開発されても、なおその上を行き結果を出してくれたことに、僕は嬉しく思います。
そう、敵は強大であればあるほど挑みがいがある。
最初は手も足も出なかったボスキャラを倒すために自分のキャラのレベルを地道に上げる作業が、今は楽しくて仕方がないです。
そんなヴァラクートと毎週スタンダードで会えるのも残り僅かな期間となってしまいましたが、僕と僕らにとって最後まで最大最強の敵であり続けてくれることを願っています。


あ、ちなみにアラーラブロックのことディスったように見えるかもしれないけど、そんなことないから!大好きだからアラーラ!ティレルちゃんもラフィークもレリカリもモンクも教主もジェスも賛美ネコもジェナーラもバンチャも流刑もファイネスト、血編みもヒルもパルスもクルーエルもエスチャも漕ぎ手もみんなみんな大好きよ!!
ただその頃は僕が大人じゃなかったっていう、それが言いたかっただけさ。
誤解の無いようにね。

コメント

hiro
2011年7月19日0:22

マジックに対する真摯な思いが伝わってくる内容ですね。
個人的には、ヴァラクートに苦杯を嘗めさせられて、ビートダウンデッキを自らの手で構築していく過程に共感を覚えました。

バントの人
2011年7月19日0:24

ありがとうございます。
ヴァラクートは愛憎入り混じった好敵手ですね!
主人公の勇者一行を育てる、素晴らしい魔王です!

AKKA
2011年7月19日0:44

魔王(笑)として頑張りますw

バントの人
2011年7月19日0:48

ご活躍期待しております!
AKKAさんのレシピはヴァラクートの教科書としていつも参考にさせてもらってます!w

JAL
2011年7月19日6:29

今の自分はヴァラクートでぶちのめされる役かな(笑)
その調整を超えられるようにこちらも工夫を考えます!

バントの人
2011年7月19日7:57

んで、
バッパラ→成長の発作→3ターン目に緑タイタンドーーン
とかやられたら泣きながら帰りますwww

ガ0-
2011年7月19日8:02

なるほど~!非常に共感しました!

親和とトロンがはびこる中での、白青パーミ。
先手2tに苦花無ければフェアリーに勝てる、白青(黒)パーミ。
ジャンドに勝てる、海バント。

自分のデッキも、トップメタとの戦いの連続でした。

経験を積み調整を繰り返せば、レベルアップできるんですね。
だからマジックは止められないです。

REQUIEM
2011年7月19日9:54

書かれた経緯を比較的そばで観てきた人間の1人として、そしてその姿勢を見習わなければと思い続けてきた1人として、とても胸が熱くなる回顧録です。今後とも同じ緑白スキー(三色目は黒で青でないところが違うけど)としてよろしく!

バントの人
2011年7月19日9:58

お互いそのトップメタを使うという選択肢が一切ないのが流石ですよねw

つうか、親和の時代にパーミッションっのがまた凄いチョイスですね!物凄い反骨精神を感じますww
過去記事からその親和時代のパーミッションを探さしてもらいます!

バントの人
2011年7月19日10:42

そうですよねぇ、緑白に青まで足せれば言うことナシなんですけどねw
出せれば勝てる理不尽エンチャント、ファイネストアワーよカムバック!!
あの頃はあの頃で無邪気にマジックやって難しいこと考えなくてもそこそこ勝てたんで楽しかったですww

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索