最近しょーもない駄デッキのことばっかりだったので、久々に本業の緑白アグロのことでも。

ニッセンから10日程経って落ちついてきたので、ニッセンで活躍した緑白について振り返ってみようと思う。
まずこれが決勝で惜しくも敗れたものの見事準優勝に輝いた藤本さんのデッキ。デッキデザイナーはローリーこと藤田剛史氏。
土地 (26)
4 : 森/Forest
2 : 湿地の干潟/Marsh Flats
3 : 平地/Plains
4 : 剃刀境の茂み/Razorverge Thicket
3 : 活発な野生林/Stirring Wildwood
4 : 陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove
4 : 地盤の際/Tectonic Edge
2 : 新緑の地下墓地/Verdant Catacombs
クリーチャー (26)
3 : 酸のスライム/Acidic Slime
4 : 極楽鳥/Birds of Paradise
3 : 刃の接合者/Blade Splicer
1 : 大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobite
4 : 刃砦の英雄/Hero of Bladehold
3 : 水蓮のコブラ/Lotus Cobra
4 : 巣の侵略者/Nest Invader
1 : 強情なベイロス/Obstinate Baloth
3 : ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine
その他 (8)
1 : 出産の殻/Birthing Pod
4 : 野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker
3 : 未達への旅/Journey to Nowhere
サイドボード (15)
1 : 酸のスライム/Acidic Slime
2 : 天界の粛清/Celestial Purge
1 : 忍び寄る腐食/Creeping Corrosion
1 : ガイアの復讐者/Gaea’s Revenge
2 : 孤独な宣教師/Lone Missionary
2 : 忘却の輪/Oblivion Ring
3 : 呪文滑り/Spellskite
2 : 召喚の罠/Summoning Trap
1 : 最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll

早速MTG wikiにも追記されているが、ここで一つ気になるのが、
極楽鳥/Birds of Paradise、巣の侵略者/Nest Invader、水蓮のコブラ/Lotus Cobraという11枚のマナ加速によって、3ターン目に4マナまで到達することを意識している。ここから刃砦の英雄/Hero of Bladeholdや野生語りのガラク/Garruk Wildspeakerにつなげることで、トップメタである赤緑ヴァラクートの「最速4ターン目原始のタイタン/Primeval Titan」に対抗する。

という記述。これは公式を始め各所の解説で言われていることだが、これには少し違和感を覚える。
確かにマナ加速11枚から4マナ域が8枚と、3ターン目に4マナを狙う構成に見えるし、実際そのように振る舞う場面も少なくないだろう。
その4マナ域、刃砦の英雄ならば次の4ターン目に7~10点の打点を稼ぎ、5ターン目の2撃目で(7~10)+4点で確実にゲームを終わらせることができる。

しかし、ガラクの場合はどうだろう。
マナクリーチャーで加速しながら3ターン目に着地し、4ターン目に大能力を使えば10点くらいのダメージが見込める。しかしこの後戦場に残るのが巣の侵略者やコブラ、極楽鳥と行った貧弱なクリーチャーだけになってしまうので、これでは次のターンにゲームを決めることはできない。
1ターン目に1マナ加速から始まり、2t刃の接合者、3tガラク+2マナ域と繋がれば4ターン目に致死量に近いダメージを叩き出せるが、1マナ域が極楽鳥4枚のみなので、そのような流れのスタートを切れるかどうかですでに確率47%。つまり先述の動きは低確率で発生するブン回りで、製作者の意図する動きとは違う。
そう考えると、結局3ターン目4マナ域で直接勝ちに繋がるプランは刃砦の英雄だけ。
(※1挿しの強情なベイロスはシルバーバレット要員と思われるので考慮に入れない)

じゃあこのデッキは刃砦の英雄頼みのデッキなの?かと言えば、そんなことは決してない。
このデッキの凄味は3ターン目の4マナ域でビートダウンすることではなく、さらにその上のマナ域を高速で唱えることができる点にある、と自分は考えている。

まず目につくのが3枚の酸のスライム。5マナであるため通常戦場に出るのは4ターン目だが、水蓮のコブラ+フェッチランドを経由すれば3ターン目に出てくる。フェッチ4枚コブラが3枚と枚数が少ないため確率は低いが、1t極楽鳥→2t何らかのマナ生物→3tアンタップイン土地という流れでも3ターン目に出すことができるため、3ターン目に5マナで酸のスライムという動きは意外と達成しやすい。
3ターン目のランデスというのはかのポンザの速さに匹敵し、ヴァラクートのみならず中~低速デッキ全般に大変強い。鍛えられた鋼に対してはCIP除去+接死ブロッカーとして働きを見せたり、鍛えられた鋼そのものを破壊できるため速度による不利を覆すことができる。

また6マナ域にはワームとぐろエンジンが3枚もいる。
3ターン目5マナと同様の理屈で、クリーチャーにより2マナ加速して4ターン目に着地させることは意外と難しくない。さらに先程登場した3ターン目のガラクの戦略的意義がここで見えてくる。3ターン目にガラクが着地することで、相手に火力やPWへの直接除去がない限り4ターン目に土地4枚+ガラク能力で6マナ以上を出せることがほぼ確定する。4ターン目に出てくる6マナ域はヴァラクートとほぼ等速である。これを使って出すのに最もおあつらえ向きなのがワームとぐろエンジンということなのである。
ヴァラクートが操る原始のタイタンほどの決定力はないものの、一撃殴れば絆魂で即座に6点ゲインできるため、噴火死へのダメージ計算を大きく狂わせることができる。さらに噴火をワーム本体に当てても、1回では死なずに分裂してしまうので非常に厄介。頭数が増えるため相手のタイタンをかいくぐって残りのライフを削りに行きやすくもなる。
また、ガラクのマナ加速を経由して出てきたのであれば、5ターン目に踏み荒らしを使って攻撃すれば単体でも9/9接死・絆魂・トランプル!さらに5/4のコブラやら5/5の侵略者やら3/4の極楽鳥やらを引きつれて総攻撃をかけるため、タイタンの上から殴り勝つことも充分可能だ。

潤沢なマナ加速からの、5マナ酸のスライム・6マナワームとぐろエンジンというのは、ヴァラクートに対する明確な「殺意」の表れであり、このデッキの持ち味だ。
中マナ域に刃の接合者や刃砦の英雄といったビートダウン用クリーチャーを取りつつ、高マナ域に繋げて戦場を制圧する、ビートダウンとビッグマナのハイブリッドなデッキと言える。

ハイブリッドというのは引くパーツが噛み合わなかったとこは動きが悪くなりがちだが、それを緩和するために出産の殻を1挿ししているのは素晴らしい。
ハイブリッド構成であるが故にクリーチャーのマナ域が1マナの極楽鳥から7マナのエリシュ・ノーンまで綺麗に繋がっており、出産の殻をいつ引いても確実に機能するようになっている。
事故防止目的で1挿しされているため専用デッキほど殻に頼った動きはできないが、1挿しの強情なベイロスやエリシュ・ノーンなど多少のシルバーバレットを取ることすら可能にしている。
特にエリシュ・ノーンは単純なビートダウン相手なら単体で勝負を決める力を持っており、最速5ターン目登場すれば相手次第ではゲームエンドだろう。

最初の話に戻るが、このローリーの緑白アグロは一般に言われているような「4マナのデッキ」ではなく「5~6マナのデッキ」であると言える。

・・・・・・ちなみに、MTG wikiの言う通り「3ターン目4マナでゲームエンド」を本当にやっているのが、いつものウチのアレ。今さらながらデッキリストを再掲。
デッキ名:ベヒーモス

土地 (24)
4 : 剃刀境の茂み/Razorverge Thicket
4 : 陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove
4 : 活発な野生林/Stirring Wildwood
10 : 森/Forest
2 : 平地/Plains
クリーチャー (26)
4 : 極楽鳥/Birds of Paradise
4 : ラノワールのエルフ/Llanowar Elves
4 : 巣の侵略者/Nest Invader
2 : 刃の接合者/Blade Splicer
4 : 皮背のベイロス/Leatherback Baloth
4 : 刃砦の英雄/Hero of Bladehold
4 : 復讐蔦/Vengevine
その他 (10)
3 : 未達への旅/Journey to Nowhere
1 : 忘却の輪/Oblivion Ring
4 : 野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker
2 : エルドラージの碑/Eldrazi Monument
サイドボード (15)
3 : 呪文滑り/Spellskite
1 : 忘却の輪/Oblivion Ring
3 : 沈黙/Silence
2 : 天界の粛清/Celestial Purge
2 : 帰化/Naturalize
2 : 忍び寄る腐食/Creeping Corrosion
2 : 攻撃的な行動/Act of Aggression

パっと見似たような緑白アグロに見えるものの、先の文章を読んだ上でなら、ローリー作緑白アグロとは明らかに違う構成なのが分かってもらえるだろうか?
こちらのデッキはローリー緑白に近いマナクリーチャー12枚ながら、1マナ域にラノワールのエルフが加わり8枚体制、代わりにコブラ無し!
4マナ域は12枚で、3ターン目手札にある枚数の期待値は「1」を悠に超える「1.8」、4ターン目に続けて連打することも視野に入れております。
その間をつなぐ3マナ域は6枚と少し寂しいものの、巣の侵略者4枚も含めると10枚と2ターン目が暇になることはほとんどなく、4ターン目までは毎ターン滞りなく生物(ないしガラク)を展開できるようになっております。
ここまででデッキの約8割、ほとんどここまでの動きをするためだけに作られたデッキです、これは。

ガラクの使い方も、ローリー緑白のようなマナ加速としての意味合いは薄く、出した次のターンに踏み荒らしを使うのが主目的。
ローリー緑白の項では「最速踏み荒らしで勝てるのは低確率のドブン」と説明したが、このデッキの場合は3マナ域の皮背のベイロスや刃の接合者を絡ませたり、踏み荒らしのターンに復讐蔦を出して奇襲的に打点を上げたりと、かなり決めやすくなっている。

ローリー作ハイブリット緑白のビートダウンの部分だけをピックアップして強調したのが「いつものウチのアレ」であり、ローリー緑白が「5~6マナのデッキ」であるのに対し、こちらは「3~4マナのデッキ」と言うことができる。
クリーチャーの平均マナコストもローリー緑白:3.35に対し、ウチの:2.54と大体1マナ域分低くなっている。

環境に対する緑白アグロのアプローチとして、制圧力を取ったか速度を取ったか。
かたやニッセン準優勝の輝かしいデッキに対して、かたや名も知れない草の根デッキを引き合いに出すのは何だか滑稽な話だけど、興味深い比較にはなったんじゃないかな。

多色ビートダウンは実に奥が深いもんだねぇ。

コメント

さとぅ
2011年7月28日16:24

あれ、Orbが入ってませんよ!

バントの人
2011年7月28日16:26

前回はこのレシピだったからOrbはないのさ!
同盟者と双子がマジでゲロだったぜw

REQUIEM
2011年7月28日16:45

いや、Orbは必要ないっすよ。

バントの人
2011年7月28日16:46

火消し乙ですwww

ベーけん
2011年7月28日19:06

ビートダウンに酸スラを複数枚積む意味がよくわかっていなかったのですが、この記事を読んで納得しました!
最近は転倒の磁石を割るケースが増えているように感じるので、ダメージレースに役立っていそうですね。

けげろー
2011年7月28日19:24

緑白好きなので、いつも参考にさせていただいております!
リンクさせていただきました。

バントの人
2011年7月28日20:07

>べーけんさん
磁石の他にも忘却の輪や未達への旅とか、置物破壊への意識がかなり薄くなってるところにメインから酸スラを突き刺してやれば、さぞ爽快かと思いますw
単体の打点が低いことが唯一気になる点ですが、やっぱり強いです!

バントの人
2011年7月28日20:11

>けげろーさん
ああー大阪勢の!今年はGPで大阪行く予定だったからera君たちと一緒に会う機会もあったかもしれないけど、延期でスケジュールが合わなくなっちゃって残念><
いずれこっちの連中引き連れて大阪に遊びに行きますんで、そんときはよろしくです!

ガ0-
2011年7月28日21:49

なるほど~!勉強になります。

>潤沢なマナ加速からの、5マナ酸のスライム・6マナワームとぐろエンジンというのは、
>ヴァラクートに対する明確な「殺意」の表れであり、このデッキの持ち味だ。

ウチのデッキのことですか?

バントの人
2011年7月28日22:19

そうですww
しかも次々コピーしてくるとか、まるで腹を包丁で滅多刺しにしてるようですwww

ガ0-
2011年7月28日23:21

自分はゲームを長く楽しみたいという感覚なので、5~6のデッキ寄りのデザインに
なるのだと思います。

対するバの人さんのデッキは、ビートダウン命って感じの覚悟に溢れてますね~。

ホント、デッキデザインの違いが表れてて面白く読ませていただきました!

マッティー☆(汁マニアファミリー)
2011年7月28日23:23

バの人さんのデッキをほぼコピーして大会で2-1してきました。
脳筋の自分には使いやすく、よくなじむデッキでした。
私もこのようなオリジナルレシピを創りたいと思います。
パクッたの事後報告になってしまい、もうしわけないですw

バントの人
2011年7月28日23:25

ありがとうございます^ ^
僕はBeat is Justiceと思ってますw
自分で自分の手に馴染むデッキを組むって大切なことですよね。

バントの人
2011年7月28日23:27

ほぼコピあざーす!!
ウチのレシピはお持ち帰り自由ですから、気遣う必要一切なしですよw
自作は楽しいです、もうデッキが可愛くて仕方ないですw

Rala
Rala
2011年7月28日23:42

久しぶりにビートを組もうと考えていたところなので、すごくためになります。

質問なんですが、枚数を決める時に計算するのって普通の確率(百分率)ですか?それとも期待値でしょうか?

ぎゃり粉
2011年7月28日23:54

ものすごい面白かったです。

バントの人
2011年7月28日23:59

期待値も百分率も同じことですよ。

先手Tターン目にA枚手札にあるための必要枚数Bを決めるには
B=61*(A/(T+6))
です。Bの小数点以下の端数は全て切り捨てです。
(60ではなく61をかけて端数切捨てにするのがボトムデッカーさん流です)

逆にデッキにB枚入っているカードが先手Tターン目に手札にある枚数(期待値)Aを求めるには、A=B/60*(T+6)です。

バントの人
2011年7月29日0:02

あざーす!
構築だけでなく分析もできるようになりたいんで、今後もこういう記事をちょこちちょこ書くかもです!

バントの人
2011年7月29日0:14

>Ralaさんへ追記
ちなみに必要枚数Bが5を超えちゃったら、似たような能力や効果を持つカードを入れて頭数を揃えます。例えば8なら稲妻4+噴出の稲妻4とか。
目覚ましヒバリみたいに5枚目以降の代役がないカードの場合、ドローソースやサーチを増やして4枚で必要なターンに引きこめるようにするか、
近いマナ域で全く別の第2プランになるカードを入れるという手があります。
ビートの場合は必要な打点を稼げればいいんで第2プランを立てるのは比較的簡単なんですが、コンボやコントロールの場合は少し工夫が必要ですね。

不悪 由宇
不悪 由宇
2011年7月31日4:43

バさんの考察は自分のようなトーシローにも分かり易く読めて好きです>∩(・ω・)∩<

てぃお
2011年7月31日19:30

米でスコンスコンに言われてたローリー緑白も視点を変えると
こんな良いデッキだったのですね!
遅ればせながらリンクさせていただくと共にバの人緑白コピーさせていただきます!

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